認知症になる前の対策として、任意後見制度はおすすめです
ご両親や配偶者、ご兄弟姉妹に認知症の兆しが出てくると
「どうしよう・・・」
と、不安になります。
「何をしていいのか?」
「何をしておいた方がいいのか?」
考えることも多くなります。
私自身の経験から言うと、介護の問題は別として、認知症と診断されて困るのは、法律的な契約ができなくなることではないかと思います。
自宅を売却して、施設に入りたいと思っても、そのための契約をすることができなくなります。
そこで、後から、あたふたしないためにも、認知症になる前の対策の1つとして、任意後見契約をおすすめします。
参考にしていただけたら幸いです。
任意後見契約とは
「自分が元気なうちに、自分が信頼できる人を見つけて、その人との間で、もし自分が老いて判断能力が衰えてきた場合等には、自分に代わって、財産管理や必要な契約締結等をしてくださいとお願いしてこれを引き受けてもらう契約」
公証人連合会HP
認知症と診断されてからは、結ぶことができません。
任意後見契約のメリットの1つは、自由に後見人を選ぶことができることです。
認知症になってから、財産管理や身上監護を誰かに依頼するときに選定される後見人(「法定後見人」といいます)は、家庭裁判所が選ぶので自由に選ぶことができません。
任意後見契約で指定するを「任意後見人」は、自由に選ぶことができるので、安心できる娘さんや、頼りにしている息子さんにお願いすることができます。
例えば、任意後見契約を結んでいない妻が認知症になり、夫が介護していた場合を考えてみたいと思います。
何年かして、介護をしていた夫がお亡くなりになった場合、認知症の妻が相続人となります。
子どもがいれば、子どもと妻が相続人となります。
子どもがいなかった場合は、夫の両親、または、夫の兄弟姉妹が、妻と相続人となります。
子どもがいなご夫婦の相続についてはこちらの記事もご参照いただけたら幸いです。
相続人で、夫の遺産を相続することになりますが、認知症の妻には契約能力がありません。
この場合、法廷後見人を選定しなければ、遺産分割協議をすることができません。
法定後見人の選定は時間がかかりますし、選ぶのは家庭裁判所でご家族の希望に沿うものになるとは限りません。
法定後見人は、財産管理が任務なので融通がきかない部分もでてきます。
この場合、もし妻が認知症になる前に信頼できる人と任意後見契約を結んでいれば、その後見人が代理して遺産分割協議をすすめることができ、手間と負担を省くことができたのです。
もし、認知症にならなかった場合、この任意後見契約はなかったものになり、費用は無駄になってしまいますが、保険の一種と考えて、契約によって得られる老後の安心と認知症になる不安のどちらが良いか、一度考えてみてはいかがでしょうか。
任意後見契約の詳細は、日本公証人連合会「任意後見契約」にも掲載されているので、参考にしていただけたら幸いです。