子どもがいないご夫婦が、遺言書を作成する場合のポイント ~兄弟姉妹に財産を渡したくない場合~
子どもがいないご夫婦が相続のことでご相談にいらっしゃる場合、自分の死後、配偶者に自分の兄弟姉妹ともめてほしくない、または、配偶者自身が相手の兄弟姉妹ともめたくないという内容が多い印象です。
親の相続の際、配偶者の兄弟姉妹との財産を巡るのやり取りに疲れ果て、自分の時はそうならないようにしたいという相談もあります。
そして多くが、どちらか一方が亡くなったら、残された方に財産をすべて相続させたいと希望されます。
それは以前ブログにも書きましたが、子どもがいないご夫婦の場合、相続人が配偶者と兄弟姉妹(または甥姪)となるからです。
このご相談に対して、「すべての財産を、妻(または夫)に相続させる」内容の遺言書を準備されてはいかがでしょうか、とご提案しています。
それは、兄弟姉妹には遺留分がないためです。
遺留分については、ブログ「子どものいないご夫婦は、遺言書を作成しておくことをおすすめします」の中で少し触れていますので、よろしかったらご参照ください。
ただ、さらに踏み込んでもう一文を追加することをご提案することがあります。
それは、お互いが亡くなったあと、財産を兄弟姉妹に渡したくない場合です。
たとえば、ご夫婦そろってお互い、「すべての財産を妻(又は夫)に相続させる」という遺言書を作成します。
ただこれだけだと、夫が先に亡くなって妻が夫の財産すべて相続し、その後で妻が亡くなった場合、妻の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪)が相続人となり、妻の財産を相続することになります。
妻の遺言書にあった、「すべての財産を相続させる」夫もすでに亡くなっているからです。
夫からすると、自分の持っていた財産が妻の兄弟姉妹(甥姪)のものになるのは、少し複雑な心境のようです。
特に先祖代々受け継いてきた土地を妻に渡すのは抵抗ないけれど、妻の兄弟姉妹に渡すのは抵抗があるという方もいらっしゃいました。
夫が亡くなった後に妻が遺言書を作り直していればこの問題は回避できますが、その時に妻が遺言書を作成できる能力があるかどうかは分かりませんし、手間と費用もかかります。
そこで、「妻は、妻が死亡する以前に夫が死亡した場合は、●●に▲▲を相続させる」というような内容の一文を付け加えてはどうでしょうかとご提案することがあります。
これを予備的遺言といいます。
兄弟姉妹に財産を相続させたくない場合だけでなく、兄弟姉妹で会いたくない人がいる場合も特定の兄弟を指定しておけば、その指定された人が手続きを行うことができますので、参考にしていただけたら幸いです。