相続した農地 この機会にきちんと整理したい!~無断転用の場合~

こんなご相談をいだきました。

「父親が所有していた農地。

農地として耕作されておらず、地目が「田」や「畑」のまま、駐車場として利用されている。

父親が生きていた頃は口出しできなかったけれど、相続を機にきちんと整理したい!」

このように、農地が農地として利用されていない場合、農地の無断転用にあたります。

自分の土地をどのように利用しようと本人の自由ですが、農地は、農地法という法律によって利用が制限されています。

特にその制限は、市街化調整区域でより厳しくなっています。

あまり知られていませんが、農地の無断転用には、罰則も設けられていますので、ご注意いただけたらと思います。

許可を受けずに農地の権利移転または農地を農地以外のものにした者、不正の手段で許可を受けた者、行政処分に従わない者などに対し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます。

岡山県浅口市HPより

この機会にきちんと整理したい!と思われた場合、どのような切り口で進めていったらいいのでしょうか?

駐車場になっているという場合で考えてみたいと思います。

参考になれば幸いです。

どのような手続きを行うのか?

方法は、大まかに分けて2つあります。

① 駐車場を、元の農地の状態に戻す

② 無断で転用したままの状態で、都道府県知事等に「農地法第5条許可申請」を行い許可をとる

農地法第5条許可申請とは?

「農地法第5条許可申請」とは、第3者のために、農地を他の地目に変更する許可を得る手続きです。

農地転用といいます。

先ほどのご相談の場合、駐車場を利用している人(第3者)のために、「田」や「畑」となっている農地を、「雑種地」という地目に変える許可となります。

農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。

農地法第5条

提出する書類は、その土地の所在地や自治体によって異なりますが、主に以下の書類を添付して、申請書とともに農業委員会等に提出します。

①理由書

駐車場を利用している人(第3者)が、なぜそこの駐車場必要なのか、そこの土地しかダメな理由を明らかにします。

理由を補完する意味で、他の土地(「候補地」といいます)と比較検討してみたが、その土地を選んだことが分かる書類(「選定理由書」といいます)が求めれらる場合が多いです。

農業委員会にもよりますが、愛知県ですと5つくらいの候補地をあげます。

②始末書

無断で転用した「始末書」を求められます。

「始末書」は書式があるので農業委員会で聞いてみてください。

③土地利用計画図

その土地をどのように駐車場として利用するのかを図面にし、周辺の土地に被害が及ばないことを明らかにします。その際、雨水をどのように処理するのかも明記します。

④土地の登記簿謄本と公図

こちらは、所在地を管轄する法務局で取得できます。

まとめ

農地にはランクがあり、農地転用できる農地と、できない農地があるので、まずは、その土地の所在地の農業委員会で確認してみてください。

以下の書類を持っていくと、話がスムーズに進むと思います。

  • 所在地の登記簿謄本(法務局で取得できます)
  • 公図(法務局で取得できます)
  • 所在地の分かる住宅地図等
  • 固定資産税納税通知書(農地を転用することで固定資産税がいくらくらい上がるか確認したい場合)(毎年4月~5月にかけて市区町村より届いています)

農地転用ができそうとの回答が得られたら、「農地法許可申請・届出に必要な書類一覧表(名称は農業委員会によって異なります)」をいただけば、何を提出すべきかが分かります。